呼吸器科
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呼吸器科
パグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリア、ブルドッグ、シーズーなどの短頭種では、外鼻孔狭窄、軟口蓋過長、喉頭小嚢反転・虚脱、気管低形成・虚脱などが単独または複合して、呼吸困難を引き起こします。特に夏期は症状が重篤化するため、注意が必要です。これらの犬種に熱中症が多いことの原因とも考えられています。
外鼻孔の狭窄は外観から診断が可能です。軟口蓋過長や喉頭小嚢反転などではⅩ線検査や軽麻酔下での内視鏡検査が有用です。
軽症例では体重管理や飼育環境に細心の注意を払うことで症状の悪化を回避します。重症例では外科的治療が有効です。手術が奏功すれば劇的な呼吸状態の改善を見ることも少なくありません。手術法としては、症例により外鼻孔拡張術、軟口蓋切除術、喉頭小嚢切除術などが単独または組み合わせて実施されます。
術前
鼻孔が重度に狭窄しています。
術後
鼻孔を塞いでいた鼻翼部分を切除し、鼻孔を拡張させました。
術前
青紫の糸で引っ張られている部分が長く伸びた軟口蓋です。これが息を吸ったときに気管の入り口に引き込まれることで呼吸困難を起こします。
術後
余分な軟口蓋を切除し、空気の通り道を確保することで呼吸が劇的に改善されました。
鼻炎の原因は多岐にわたります。犬・猫で「かぜ」と言われるものは幼齢~若齢期に多くみられますが、成犬・成猫でもみられます。ほかに特発性(リンパ球プラズマ細胞性)、歯牙疾患や異物、腫瘍などによる二次性、アレルギーなどがあります。中齢から高齢の犬では歯周病からの波及がかなり多くみられますので、口腔内のチェックも欠かせません。
年齢、症状などの情報、必要に応じて画像検査(Ⅹ線、CT)、ウイルス・細菌検査、細胞・組織検査、内視鏡検査、口腔内検査、血液検査などから総合的に診断します。
原因が様々であることから、それに合わせた治療を実施します。かぜでは抗菌薬や抗ウイルス剤の投与、特発性などの慢性鼻炎ではステロイドの使用、歯牙疾患由来のものでは口腔内の治療により治癒が期待できることが多いです。
術前
重度の歯周病から左上顎犬歯が自然脱落し、その後、口側から左鼻腔内が露出した状態になり、水やフードが鼻腔内に入り込み重度のくしゃみがみられました。
術後
周囲の歯肉を切開・剥離して露出した鼻腔を閉鎖することで、くしゃみは完全に消失しました。
犬の慢性気管支炎のひとつの基準としては、現在より遡った1年間に少なくとも連続2か月間のほとんど日に咳の症状がみられることとされています。症状は軽度のものから重度のものまでさまざまですが、中齢・高齢の犬にかなり多くみられます。
身体検査やこれまでの症状の経過より慢性気管支炎を疑い、Ⅹ線検査、血液検査などにより他の呼吸器疾患が無いか確認します。また、心雑音などが聴取され心臓疾患が疑われる場合は、心エコー検査による心臓病の重症度評価なども実施します。一般的にはこれらの検査により除外診断されることが多いと考えられます。最も有用な診断法は、全身麻酔下での気管支鏡検査とされています。
内服薬による治療では、抗炎症薬、鎮咳薬、気管支拡張薬、去痰剤などが使用されます。抗炎症薬としてはステロイド剤が使用されますが、ステロイドは長期投与による副作用のリスクもあるため、症状が改善されれば可能な限り減薬を試みます。代替として、ステロイド吸入薬による治療があげられます。内服のステロイド剤より副作用を軽減できると考えられていますが、動物の性格によって使用が困難な場合もあります。
猫の喘息は人の喘息と同様、十分には解明されていません。ハウスダスト、タバコの煙、花粉、芳香剤などの吸入があげられますが、明確にはなっていません。これら何らかの原因によって気道の炎症や収縮などによって気道閉塞が起こり、突然、発作性の咳や喘鳴、呼吸困難などの症状がみられます。
咳、喘鳴および呼吸困難などの症状から本疾患が疑われます。胸部レントゲン検査が重要であり、呼吸困難を起こす胸水、腫瘍、気胸、肺水腫などを除外したうえで、気管支陰影の増強が重要な所見となります。右側の肺の中葉という領域に、無気肺と呼ばれ空気を取り込めなくなった肺葉も比較的よくみられます。血液検査ではあまり大きな異常がみられないことが多く、好酸球という白血球のひとつが増加することもありますが、それほどよく認められる所見ではありません。
急性増悪期で重度の呼吸困難を呈している場合、直ちに酸素吸入を実施し、同時に気管支拡張剤とステロイド剤の注射投与を実施します。呼吸困難の改善までは酸素室などでの管理が一般的です。呼吸困難が落ち着き、レントゲンによる気管支所見が軽減されれば内服薬による治療に移行します。
慢性期に使用される内服薬はステロイド剤が中心となりますが、気管支拡張剤なども併用し、症状のコントロールを実施します。重度の喘息では生涯的な投薬治療が必要になることがほとんどです。このような場合、ステロイド剤長期投与による副作用が問題となるため、猫が許容できれば吸入薬による治療も選択肢となります。
治療前
重度の呼吸困難で来院したときのレントゲン写真です。気管支陰影の増強と肺野全体の透過性が低下(通常より白く映る)しています。
治療後
2週間後のレントゲン写真。3日間の入院治療後、自宅での内服薬投与により改善がみられました。完治はしないため、その後も継続的な治療が必要です。
喉頭麻痺は、吸気性喘鳴(息を吸うタイミングでみられる)、呼吸困難、チアノーゼ、失神など重篤な症状を示します。先天性と後天性がありますが、高齢の大型犬でみられることが一般的です。
喉頭は気管の入り口を構成する領域で、左右の扉のような構造になっています。息を吸うときにはこれが開くことで空気の通り道をつくりますが、喉頭麻痺はこの扉の開閉がうまくいかなくなった状態です。そのため息を吸おうとしても扉が閉じたままで、肺に空気を吸入することができませんので、とても息苦しい症状が持続します。
口腔内視診、頸部触診、X線検査などにより他の疾患がある程度除外できれば、軽麻酔下での喉頭部内視鏡検査が有効です。息を吸う時、吐く時の喉頭の動きから診断が可能です。
喉頭麻痺では薬によって喉頭の動きを改善させることはできません。そのため外科的治療が必要となります。これには片側披裂軟骨側方化術と呼ばれ、閉じたままになってしまった扉のうちの一方を開いた状態で固定する手術法が選択されるケースが多いです。これによって呼吸困難はかなり改善されますが、喉頭の扉が開いたまま固定されるため、気管内に食物や水も入りやすくなり、誤嚥による発咳、肺炎等のリスクがあります。
術前
内視鏡検査:写真のためわかりにくいですが、スリット状(赤矢印)になったまま喉頭の開閉運動が消失しています。
術後
開口部が術前より大きく開いており(青矢印)、呼吸状態は劇的に改善されました。