腫瘍科
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腫瘍科
近年、動物の平均寿命が伸びてきており、犬・猫の悪性腫瘍を診断するケースが増えてきております。特に犬の亡くなる原因のトップが【癌】であるという報告もされています。
腫瘍の場合、発生した部位によって症状が異なります。体表に出来た場合、出血を起こしたりすることがあります。お腹の中に出来た場合は、食欲不振、嘔吐や下痢などが一般的です。腫瘍は品種・性別に関係なく全ての動物で発生します。腫瘍の診断・治療においては早期発見・治療が重要となりますので、早めの受診をお勧めします。
リンパ腫とは白血球の一種であるリンパ球が腫瘍性に増殖する悪性腫瘍で、犬猫とも多くみられます。リンパ腫は全身をめぐる血液の細胞である白血球が癌化するため、体のほぼすべての組織に発生する可能性があります。
その発生する場所の違いにより症状や治療に対する反応、予後(治療後の経過)が異なる場合があるため、発生場所によりいくつかの型に分類されます。
犬で多くみられるタイプです。体表にあるリンパ節が腫大し、進行に従って肝臓、脾臓、骨髄などにも広がっていきます。症状は進行度にもよりますが、無症状~軽度が多いとされています。しかし体重減少、食欲不振、元気消失、発熱など非特異的な症状が見られることもあります。
犬ではミニチュアダックスフンドに多くみられ、猫に最も多くみられるタイプのリンパ腫です。消化管のなかでは、小腸での発生が多く、ほかに胃、回盲部、大腸などでもみられます。慢性的な下痢、嘔吐、体重減少、食欲不振、低タンパク血症などが生じます。ときに腸閉塞や腸管穿孔による腹膜炎を起こすことがあります。
胸骨リンパ節や胸腺という胸の中のリンパ組織が腫瘍化するものです。猫白血病陽性の猫に多くみられる特徴があります。腫瘤による圧迫や胸水貯留により呼吸困難が起こって気づくケースが多くみられます。腫瘍随伴症候群として、高カルシウム血症が認められることが多いです。
皮膚に発生するまれなタイプです。孤立性のこともあれば全身に多発することもあります。
発症は少ないですがいずれも猫で比較的みられるタイプで鼻腔型、腎臓型、喉頭型などがあげられます。鼻腔型は鼻梁部に腫脹がみられるようになります。
腎臓型の症状は非特異的で元気食欲の低下、嘔吐などのほか、触診で腫大した腎臓を確認できることがあります。喉頭型は鳴き声の変化がみられるようになることが多いです。
リンパ腫そのものの診断は各部位に見られた腫瘤の細胞診あるいは組織生検によるリンパ球の腫瘍性増殖の証明により行います。治療の目安とするために、リンパ球の種類(T細胞性、B細胞性など)、またリンパ球のサイズにより大細胞性や小細胞性なども評価します。ほかに血液検査、レントゲン検査、超音波検査などを行いステージ分類(進行度)も実施します。
リンパ腫は全身性疾患であるため、化学療法(抗癌剤)が主体となります。使用される抗癌剤は比較的多くのものが報告されています。リンパ腫の種類やそのときの動物の全身状態やリンパ腫の種類によっても変化します。
基本的には数種類の抗癌剤を組み合わせた多剤併用プロトコールにより、計画された間隔で薬剤を投与することが多いです。
リンパ腫は全身性疾患であるため、通常は外科療法の適応ではありません。ただし、消化管の場合は通過障害を引き起こすので、手術で取り除くことによりQOLの改善が見込めます。しかし、リンパ腫は全身疾患なので、外科手術単独の治療で終わらず、補助療法として化学療法を併用し、全身に対する治療を施すことが必要になってきます。
近年、猫の消化器型リンパ腫に対し、外科的切除と抗癌剤を併用し高い治療効果を得た報告がされています。そのため、当院でも可能なら手術による切除を行い、術後は多剤併用による抗癌剤治療を実施しています。
多剤併用化学療法にて長期寛解が得られました。
犬の肥満細胞腫はほとんどが表皮あるいは皮下組織に発生する悪性腫瘍です。皮膚以外では、消化管、肝臓、脾臓、口腔、鼻腔、結膜、脊髄腔などにも発生が報告されています。猫においても同様に皮膚における発生が多くみられます。
良性の経過をたどることもありますが、内蔵型肥満細胞腫の転移巣の可能性もあるため、犬と同様に注意が必要な腫瘍です。皮膚肥満細胞腫の肉眼的所見はその部位の毛が抜けていたり、赤くなっていたりすることがあります。猫ではかさぶたが付着し、一見傷のように見えることもあるため注意が必要です。
針生検による特徴的な肥満細胞の増殖所見から診断可能です。ほかに、領域リンパ節の触診や細胞診、血液検査、レントゲン検査、超音波検査などを実施し転移巣や原発巣の有無を確認し、進行度の評価(臨床ステージ分類)をします。
通常は外科的切除が推奨されます。根治のためには広範囲切除といわれる腫瘍とその周辺組織を大きく切除する術式が必要です。
しかし、大型のものや発生部位によっては広範囲切除が困難なケースもあります。以前は一般的な抗癌剤も使用されていましたが、有効性はあまり高くありませんでした。近年では動物用(犬)の分子標的薬が市販され、腫瘍細胞における遺伝子変異があれば奏効率が高まると報告されています。
肥満細胞腫と同様、多くが体表に発生する悪性腫瘍です。一般的に肺などへの遠隔転移はまれですが、局所浸潤性が高いことが知られています。軟部組織肉腫は総称であり、具体的には血管周皮腫、末梢神経鞘腫瘍、線維肉腫、脂肪肉腫、粘液肉腫などが含まれます。
軟部組織肉腫が疑われた場合、針吸引による細胞診、針コア生検やパンチ生検などによる組織生検により診断します。
外科的切除により根治を目指します。初回の切除は特に重要です。切除法は発生部位や大きさにより個々の症例ごとに検討する必要がありますが、軟部組織に対する基本的な手術法は広範囲切除となります。通常、第一選択にはなりませんが、放射線治療や低用量化学療法なども行われることがあります。
閉創可能な最大限の拡大切除。術後の病理組織検査では分類不能軟部組織肉腫、完全切除と診断されました。