消化器科
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消化器科
消化器の病気は主に胃腸の病気のことを指し、下痢や嘔吐などの症状で来院されることが多いです。ひとくちに「下痢や嘔吐」と言ってもさまざまな症状の現れ方があり、数日でおさまる急性のケースから、1ヶ月以上も続く慢性的なケースもあります。
急性の場合、季節の変わり目や誤飲、飼育環境の変化、ストレスなどが要因として考えられるケースが多いです。
一方、慢性の場合には消化器の炎症や腫瘍、アレルギーが要因であるほか、ペットの命にかかわる病気である「膵炎」の可能性も考えられます。犬種・猫種、年齢などによっても、かかりやすい病気の種類は異なります。
「すぐ治るだろう」と放っておくのではなく、原因を突き止めて治療を行うことが大切です。
動物は色んなものを口に入れます。それは家の中やお散歩中とどこでも起こりえます。美味しい物や面白いもの、興味をそそられるものが沢山あるので注意が必要です。
飲み込んでも小さなものであれば、便と一緒に出てくれれば問題にならないこともあります。しかし、大きさによっては胃内に永久的に残ってしまったり、胃から小腸に入って腸閉塞になる場合があります。
異物を飲み込んで比較的すぐの場合は、注射などで催吐とよばれる処置をします。これで吐いてくれれば良いですが、大きさがあまりに大きな場合や無理に吐かせると食道などを傷つける恐れがある場合は、全身麻酔下での内視鏡による摘出あるいは開腹による胃切開を実施します。
もしも腸閉塞になってしまった場合は開腹手術による腸管の切開によって摘出します。発見が遅れた場合などは腸管が壊死し、腸管そのものも一部切除することになります。あまりに広範囲に壊死が広がった場合は短腸症候群となったり、最悪の場合は細菌性腹膜炎により死に至ることがあります。
胃内に縫い針が確認できます。
内視鏡により摘出したことにより開腹手術を回避できたため、その日のうちに退院となりました。
これらは摂取した量にもよりますが、危険な状態となることがあります。もし食べたことが分かっている場合、早めにご相談ください。
3週間以上の下痢/軟便、嘔吐、体重減少、腹鳴、食欲不振などの症状がみられる疾患を慢性腸症といいます。原因ははっきりわかっていないことも多いですが、治療に対する反応性から慢性腸症はさらに食事反応性、免疫抑制剤反応性、抗菌薬反応性に分けられます。いずれも残念ながら治癒することはほとんどありません。
慢性腸症の診断は一筋縄ではいかず、ほかの病気を除外することから始まります。まず、腸管の寄生虫や腫瘍などの除外が必要になります。それ以外にも膵臓、肝臓、腎臓、副腎皮質機能低下症などさまざまな下痢の原因となる病気がないかについて診断を進めます。
これらの除外により慢性腸症と考えられた場合、食事の変更や抗菌薬の投与に対しての反応性(症状の改善)があるかどうかを確認します。これらに反応があれば食事反応性、抗菌薬反応性と診断されます。
一方、これらの食事療法や抗菌薬に対して反応がみられない場合や症状が重度であるケースなどでは、内視鏡検査による腸管内部の観察や病理組織診断などを実施して診断していきます(免疫抑制剤反応性であることが多い)。
食事反応性や抗菌薬反応性腸症については、当然ながら各症例に合ったフードや抗菌薬の内服を実施し、症状をコントロールします。内視鏡検査で腸管内に慢性的な炎症がみられるケースは炎症性腸疾患などともよばれ、ステロイドをはじめとする免疫抑制剤を使用することになります。
これに対して良好な反応を示せば、ステロイドを減量しながら、症状をコントロールするために最小限の投与量を探ります。また、免疫抑制剤反応性であった場合でも食事療法を併用することで症状のコントロールがしやすくなり、ステロイドの減量に寄与することもよくあります。
内視鏡検査により、リンパ管拡張(白い点)をともなう重度のリンパ球形質細胞性腸炎と診断。ステロイドを使用し下痢のコントロールを行いました。
まず膵炎のリスク要因としては肥満や食事が考えられます。特に高脂肪食は膵臓に負担となります。また、高齢の動物でよく見られる副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症などのホルモン疾患や、糖尿病もリスク因子として挙げられます。膵炎の主な症状としては腹痛、嘔吐、食欲不振です。【祈りのポーズ】という伏せの状態からお尻だけをあげる姿勢が見られることもあります。
膵炎を診断するには、まず血液検査が必要になります。膵特異的リパーゼといわれる膵炎マーカーのほか、膵酵素のアミラーゼ、白血球、CRPといった炎症マーカーが特に重要となります。
重度の膵炎では黄疸や肝臓の数値が上昇していたり、腎臓の数値が上がっていることなどもあるため、肝疾患・腎疾患など他の病気との鑑別も重要になります。ほかにも嘔吐の原因となる誤食が無いかや触診で上腹部の痛みがないかなど確認します。
腹部超音波検査では膵臓の腫大や膵臓周囲の炎症、腹水の有無の確認を行うことが出来ます。レントゲン検査で膵炎を特定することは困難ですが、異物の有無を確認するのに行ったりします。
急性膵炎は通院治療でも対処できる軽症のものから治療に時間がかかる重度のケースがあります。そのため入院が必要になることも多くあります。治療はさまざまな対症療法や抗炎症剤の投与を実施します。治療は点滴がメインとなり、制吐剤、鎮痛剤、抗菌薬などを使用します。
以前はこれらの対症療法のみでしたが、近年では犬専用の膵炎用抗炎症剤が市販されており、治療に用いることが増えてきています。急性膵炎の極めて重度のケースでは腹膜炎や多臓器不全などを併発し、死に至る場合があります。
重度の膵炎による炎症の波及により十二指腸のコルゲートサイン(腸粘膜がうねった状態)がみられます。
便秘は大きく症候性と機能性に分けられます。症候性は便の通過が物理的に妨げられる状態であり、機能性は腸の蠕動が低下したり、便が貯留しても便意を感じられないなど、排便機能そのものに障害が起こっている状態をいいます。
犬ではほとんどが症候性であり、猫は症候性、機能性いずれもよくみられます。
便秘そのものの診断は問診、腹部触診やレントゲン検査などにより行いますが、症候性か機能性かを見極めることが治療上も重要となります。そのための追加検査としては超音波検査や直腸内診のほか、内視鏡検査などを実施することもあります。
犬でよくみられるタイプの症候性便秘の原因としては会陰ヘルニアや前立腺肥大などがあげられ、これに対する治療を実施することで便秘の改善がみられることが一般的です。しかし、猫における機能性便秘などでは生涯的な治療が必要になるケースが多く、重度の場合は浣腸、摘便による糞塊の除去を実施します。
また、各種便秘用薬剤の中から、症例に合わせたものを選択します。数種類の内服薬を併用することもあります。ほかに近年では療法食の進歩により、食事療法のみで良好なコントロールが可能な症例もいます。
また猫では骨盤狭窄による症候性便秘も比較的多くみられ、これに対しては骨盤拡張術などの外科療法が奏功することがあります。そのためやはり便秘のタイプを診断することが重要です。
備考:日本猫 3歳
骨盤の狭窄(赤矢印)と大きな糞塊(黄矢印)がみられます。
恥骨切除、坐骨結合分離、切除恥骨片移植およびロッキングプレート固定を行い、術後は内服薬の使用なく排便が可能となりました。