生殖器・乳腺科
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生殖器・乳腺科
雌犬においてもっとも発生の多い腫瘍です。早期の避妊により発症が抑えられることが分かっており、性ホルモンが発症に関与していると考えられています。犬の乳腺腫瘍はすべて悪性(癌)というわけではなく、体格別では中型犬や大型犬で小型犬よりも悪性の割合が多いという報告もあります。
雌猫における乳腺腫瘍の発生はすべての腫瘍の中で3番目に多いと報告されています。発症年齢の平均は10~12歳です。シャム猫と日本猫では乳腺腫瘍の発症リスクが他の品種と比較して約2倍高いとされています。
犬と同様、早期の避妊による予防効果があることから、性ホルモンとの関連が示唆されています。しかし、犬と大きく異なるのは乳腺腫瘍の80~96%が悪性の腺癌となります。急速にリンパ節転移や遠隔転移を起こすことも多く、来院時には病期が進行していることも少なくありません。
乳腺部の硬いしこりの触知によって仮診断します。通常の腫瘍で実施されるような細胞診は、乳腺腫瘍については正診率が低く、通常あまり行いません。
ただし、乳腺腫瘍以外の腫瘍が乳腺部に発生することもあるため、しこりの状態によっては細胞診を実施することもあります。その他、リンパ節の触診、Ⅹ線などにより転移の有無を確認します。
手術可能な状態なら、治療は通常外科的な腫瘍の摘出になります。犬では必ずしも乳腺の全摘出をするわけではなく、個々の症例に合わせて術式を選択します。しかし、猫では基本的に乳腺全摘出が必要になります。しかもできるだけ早期に実施することが肝要です。
大型の腫瘍のほかにも複数の腫瘍がみられます。
手術後
子宮内への大腸菌等の細菌感染をきっかけに、子宮内に膿が貯留する病気です。免疫力が低下した黄体期(ヒートが終わった後)において多く発症します。黄体期は黄体ホルモンの影響を受けて子宮内膜が異常に増殖し、子宮の免疫レベルが低下することで細菌感染を引き起こし易い状態となっています。
子宮内に膿が蓄積すると子宮内に強い炎症を生じますが、そのような状態でもペットが元気でいる場合があるため発見が遅れてしまうことも珍しくありません。発見が遅いほど助かる確率は低くなってしまう為、早期発見が重要な病気です。
血液検査による白血球数、CRP値(炎症マーカー)の上昇や超音波検査による子宮の腫大により診断します。
開腹手術による子宮卵巣の全摘出を実施します。子宮内の細菌毒素からエンドトキシンショックによる腎不全などを発症している場合は、十分な輸液、抗生剤などによる内科的治療が欠かせません。
また、子宮内膿汁が腹腔内に漏出した場合や子宮破裂した時などは十分な腹腔洗浄を実施し、ドレーンの設置を行います。子宮蓄膿症は手術で切除したからといってすぐに体調が改善するわけではありません。術後の治療も大変重要になります。
子宮内に膿がたまり、腫れあがった子宮。
精巣から分泌される性ステロイドホルモンの働きにより、主に中~高齢期に発症します。軽度では無症状であったり、間欠的な血尿がみられますが、重度の前立腺肥大では骨盤腔内で直腸を圧迫し、排便障害(便秘)を引き起こします。
前立腺肥大は超音波検査、Ⅹ線検査、尿検査(細胞診含む)などから診断しますが、前立腺癌との鑑別が必要になることもあります。
治療は精巣からのホルモン分泌が原因であるため、去勢が第一になります。しかし、高齢であったり、他の疾患により全身麻酔のリスクが高いときは、高アンドロジェン製剤といわれる精巣ホルモンの作用を阻害する内服薬を使用します。しかし、一般的に去勢ほどの高い効果は得られません。
主に前立腺肥大から続発して発症します。前立腺に細菌感染をおこし、血尿や膿尿などがみられます。また、発熱により元気食欲の低下がみられます。膿瘍化していない前立腺炎は去勢と抗菌薬治療が有効です。
一方、前立腺膿瘍となった場合は、去勢・抗菌薬治療は当然ながら開腹手術による前立腺に対しての直接的な処置が必要になります。具体的には前立腺切開による内部の十分な洗浄と縫縮術あるいは大網充填術と呼ばれる方法のいずれかを実施します。
精巣は胎児期に腎臓付近のお腹の中にあり、犬では生後30日以上、猫では生後約20日ごろに陰嚢内に下降します。しかし、片側あるいは両側の精巣が、性成熟の時期に達しても陰嚢内に下降していない場合、これを潜在精巣と呼びます。
問題は下降していない精巣が高い確率で腫瘍化することです。腫瘍化した精巣腫瘍は周囲リンパ節への転移や過剰なホルモン分泌によって骨髄を障害します。骨髄がダメージを受けると、白血球減少による免疫低下、貧血、血小板減少による止血異常をきたし、一度発症すると多くが不可逆的です。
性成熟期以降に陰嚢内に両側の精巣が触知できないこと、鼠径部における精巣の存在、腹部超音波検査による腹腔内の精巣の確認などにより診断します。発見時にすでに腫瘍化していることもあるため、その場合は画像診断などでの転移の有無や血液検査による再生不良性貧血、白血球や血小板の減少がないかを合わせて検査します。
精巣の摘出を実施しますが、腹腔内潜在精巣の場合は開腹手術が必要になります。すでに転移や貧血を合併している症例に対しての有効な治療法はありません。
輸血による対症療法もありますが、輸血体制の整った人医療と異なり、複数回の輸血を続けることは現実的には困難です。潜在精巣は簡単な身体検査ですぐにわかる病気であるため、診断されたときは早めに精巣の摘出を行うことが重要です。